―MIKIMOTO のクラフツマンシップの特徴や、他にはない強みは何だと思いますか。
長年にわたり先人たちが築き上げてきた技術、知識、そして知見が継承されている点にあります。
このような環境において、日々同僚や先輩と切磋琢磨しながら技術を追求できることが、MIKIMOTO のクラフツマンの強みであると考えております。
―創業以来の技術や精神は、どのように受け継がれてきたのでしょうか。
マニュアル等も当然存在するのですが、それ以上に現場において、先輩社員が隣で生産を行っている環境の中で、その指導を直に受けながら、技術を磨くことで受け継がれます。
また、個人個人の感性も磨き、より美しい品物、より美しいライン、軽やかさ、そして MIKIMOTO らしい商品を作るための技術と感性を高めることが重要であると考えます。
―入社して一番最初に経験するのはどのような工程でしょうか。
私が入社した頃は、ポリッシュ仕上げを担当することが多かったですね。
現在、弊社は高額な逸品商品のみならず、量産品も取り扱っております。
入社当初は、量産品やある程度まとまった数の商品を研磨し、MIKIMOTO の品質や商品の特徴を深く理解していくことが求められます。
―デザイン画を実際のジュエリーに仕上げる過程で、難しいと感じることは何ですか。
また、常に意識していることはありますか。
デザイナーが作成した図案を、立体に落とし込むプロセスが最も困難な作業となります。
しかし、これは同時に職人の技術や感性を発揮する機会でもあります。
デザイナーが考えつかない部分や、我々だからこそ可能にできる技術や感性は常に発信するようにしています。
また、デザイン画を実際の形にした時に美しいものになるように工夫、提案するということは常に心がけています。

―1点のジュエリーを仕上げる中で、最も神経を使う工程を教えてください。
全工程ですね。
非常に高額で貴重な素材を取り扱っているので。
しかし、あまり怖がってビクビクしながらやっていても良いものはできないので、攻めるところは攻める。それが職人の腕の見せどころだと思っています。
―MIKIMOTO のジュエリーの“美しさ”は、細工のどこに最も表れていると思いますか。
ラインの軽やかさや美しさ。
それこそが MIKIMOTO の一番の特徴だと思っておりますので、そこを意識しながら皆が作業に取り組んでいます。
―見た目の美しさと実際に長く使える強度、二つのバランスはどのように調整しているのでしょうか。
強度を持たせるために、目立たない部分で補強を加えるのですが、ただ単に補強するのではなく、ジュエリーのデザインに合わせて補強部をデザインして付けるなど、工夫しながら強度を持たせています。
例えば植物がモチーフの商品でしたら、植物のツルのような感じで補強するなど、デザインとテーマをよく理解した上で補強することで、美しさも表現しています。
―昔と比べて、今の職人に求められているものはどう変わりましたか。
かつては、作業者一人ひとりが一つの工程を担当する体制で生産を行っていましたが、現在では、各作業者が複数の工程を習得することが推奨されています。
そのため、以前と比較して習得すべき技術は増えていますが、これらの習得は、新たな発想や製造プロセスへの好影響をもたらすものと期待しておりますし、現在の若手社員は、非常に意欲的に業務に取り組んでくれていると感じております。
―経験年数が増えることで変わってきた“手の感覚”はありますか。
地金を常に触って作業をしているのですが、例えばヤスリが地金に当たる感覚や音で、表面の状態がわかるようになってきます。
私も仕上げは長い間行っていたのですが、伝わってくる感覚で、今の地金の表面がどれくらい磨かれているのかというのがわかります。
他の作業者も同様で、それぞれがそのような感覚は持ち合わせていると思います。

―伝統的な技法と先進的な技術の融合についてはどのように考えていますか。また、それでも「最後は手でしか判断できない」と思う部分はどこですか。
新しい技術や機械など、本当に使えるものはどんどん取り入れ、時代にあった新しいものを作っていく、提案していくというのは大事なことではあります。
しかし感性の部分を持ち合わせていないと結局、でき上がるものも少し味気なくなってしまいがちです。
また、製品の最終的な仕上げは、作り手が実際に装着感を確かめて行います。特に肌に直接装着する製品の場合、装着感は重要です。
実際に手で作業し、その感覚を体感しながら作業することで、より良い製品が完成すると考えています。
―創業以来受け継がれてきた技や考え方で、日々意識していることはありますか。
一世紀を超える長い歴史を有しており、先人たちの知見を大切にしながら、常に新しいことに挑戦しています。
MIKIMOTO の商品が世界へと進出しているので、世界的なブランドと肩を並べるためにも、古い技術や伝統を大切にしながら、新しいことに挑戦していくことが重要だと考えています。
―この MIKIMOTO の職人技を、どのように次の世代へつないでいきたいと考えていますか。
決まったやり方やマニュアル等もあるのですが、技術があっても、ひとつひとつのアイテムイメージを感じ取る感性がないと良いものが作れないので、他のブランドとは違う、繊細さや柔らかさといった MIKIMOTO のジュエリーの特徴を、次の世代に対して教え込む・伝えていくということが大切だと考えています。


