SEVESKIGが2026年春夏コレクション「MEMORIES」を韓国で発表。
デザイナーNori氏に、なぜ韓国でショーを開催したのか、今回のコレクションの背景、そして今後の展望について話を伺った。
WTS(以下W): 今回、韓国でショーを開催された経緯を教えてください。
Nori(以下N):「五色人」をテーマにした5シーズンが一区切りついたこともあり、一度初心に立ち返ってみたいという気持ちがありました。だからこそ、日本ではなく“新たな場所”でチャレンジしてみたいと思ったんです。
韓国ではSCULPSTOREでエクスクルーシブ展開をしていますが、まだ知名度はこれから。より多くの方にブランドを知ってもらうには、現地でのショー開催が良いタイミングだと感じました。そして、ちょうど1年前に韓国のアーティストB.Iとのコラボレーションの話が持ち上がり、「まずは関係性を築いてから始めよう」という流れになったんです。彼はヨーロッパツアーや3枚目のアルバムでもSEVESKIGを着てくれていて、ファンの方々にもブランドが少しずつ浸透してきたのを感じていました。
W: SCULPSTOREでの展開を決めた理由は?
N:コロナ明けの1月にパリへ行ったとき、最初に声をかけてくれたのがSCULPSTOREでした。オーナーも信頼できる方で、「この人になら任せられる」と思えたのが大きいです。現在は7〜8店舗を展開されていて、日本のブランドも多く扱いながら、グローバルな視点でセレクトしているのが魅力です。


W: 韓国でショーを行うにあたり、コレクションの内容にはどのような意識を持たれましたか?
N:「初心に戻る」というテーマがあったので、自分が最初にファッションに夢中になった時代を振り返って、15〜16歳の記憶をテーマにしました。それが今回の“MEMORIES”です。


W: 当時、どんなファッションに惹かれていましたか?
N:中学生の頃から古着が好きで、STUSSYやSUPREME、NIKE、ACG(NIKEのアウトドアライン)、FILA、NAUTICAなどが地元に入ってきた時に、お金がないなりに頑張って買って着てましたね。16歳の頃はスケートカルチャーにどっぷりハマっていて、HIP HOP、ハードコア、ミクスチャーなどの音楽と一緒に、海外アーティストが着ていた服にも強く影響を受けていました。


W: その中で、特に思い入れのあるアイテムは?
N:全体的にそうなんですが、特に思い入れが強かったのは、NIKEのアウトドアラインであるACG。当時、16歳の自分はそれが本当に好きで、自分でタトゥーを入れてしまうほどハマっていました。その思い出を落とし込んだアイテムは、自分の中でも印象的でしたね。

W: ランウェイの会場はどのように決められたんですか?
N:これが本当に大変でした。ファッションイベントに対応してくれる会場探しのサポート会社がなかなか見つからなくて。でも、日本と韓国の芸能関係に詳しい知人が、モデル事務所とプロダクションを兼ねた会社を紹介してくれて。そこから候補をいくつか挙げてもらって、トントン拍子で1ヶ月前に決まりました。実はパリに行く前に決まらなかったら中止も考えていたので、ホッとしました。
W: 会場はどんな場所でしたか?
N:本当はスケートパークでやりたかったんです。16歳の自分は学校に行かずスケボーばかりしていて、大会にも出ていたので。外にあるハングルのネオンが見えるようなロケーションもエモくて良いなと思っていたんですが、ちょうど梅雨時期で、全員に反対されました(笑)。自分としては「カッパを用意しているから、それを着てもらえばいいんじゃないか」と思っていたんですが、「それじゃ誰も来ないよ」と言われてしまって。雨の中でショーをやるには屋根が必要で、そうなると行政の許可も必要になってくるので、最終的に屋外は断念しました。屋内開催に切り替えるなら、SCULPSTOREの近くでアフターパーティーも視野に入れたかったので、最終的にはレンガがむき出しで、石が転がっているような、ちょっと荒れた雰囲気の場所に決まりました。


W: 今回のコレクションは前回とはかなり印象が変わりましたね。制作において意識した点は?
N:前回は厳かで静かな空気感を意識していたのですが、今回は「今の自分のベースとなっている記憶」をかたちにしようと思って制作しました。アメリカのイメージをベースに、16歳の頃の反抗的なマインドを、パンク調のヘッドギアなどで表現しました。



W: 日本のブランドがランウェイをするなら、日本やパリが多い印象ですが、韓国で開催する狙いは?
N:もともとストリート出身なので、絶対にパリでやりたいという気持ちはあまりなくて。最近は韓国のシーンとの親和性ができてきていると感じていて、韓国のシーンでもっと広げていけたらいいな、という思いがありました。基本的には「やりたい時に、やりたい場所で、届けたい人に届ける」というのが大事だと思っています。


W: 実際に開催してみて、どんな印象を持たれましたか?
N:やっぱり日本と違って集客には不安がありました。会場の2階がバックステージで、下に降りる前はかなり緊張していたんですが、満席になっているのを見て本当に安心しました。韓国のセレブリティの方々も多く来てくださって、SNSでも大きな反響があったと思います。


W: 今回もライブパフォーマンスがありましたか?
N:はい。オープニングはB.I、フィナーレではT-STONEと韓国のNSW yoonがパフォーマンスをしてくれました。B.Iがあんな小さな会場でライブをすることって滅多にないので、もっと大きな会場でもよかったかもと少し思いました。T-STONEとyoonには、日本と韓国の架け橋になるようなイメージで楽曲を作ってもらいました。

W: 今後も海外での展開を考えていますか?
N:大変だったのは8割。でも、そこから派生して色々な可能性が見えたのも事実で、2割はすごく希望を感じました。ただ、本当に疲れたので、ショーは年1回にしようかなと思っています(笑)。今後はショーという形にこだわらず、自分たちならではの見せ方を常に模索していきたいですね。


W: 今後の展開について教えてください。
N:B.Iとのコラボレーションに加え、大友克洋さんの『MEMORIES』30周年を記念したコラボも予定しています。一度きりで終わらせるのではなく、継続的にやっていくことでブランドを浸透させたい。来年も韓国でランウェイを予定していますので、楽しみにしていてください。