WTS(以下:W) 小さな違和感をコレクションで表現されたとのことですが、そのきっかけとなるエピソードはございますか?
Mr. Morikawa(以下:M) 先シーズンは、明確なスタイルを決めずにLOOK BOOKの製作過程に入ったのですが、スタイリストの遠藤彩香さんがスタイリングの際にすごく面白い着せ方をして下さって。その着方を服で再現しても面白いかもしれないと思ったのがきっかけです。僕らは、ベーシックな服を作っていたのですが、そこに一個足すだけで生まれる違和感に魅力を感じて、仮縫いの段階から試行錯誤を重ねて製作を始めました。
W:今季のインスピレーションは、「小さな違和感」でしょうか?
M:そこも大きく占めているんですが、今回HUMMEL 00に関してもインスピレーションになっています。それは、デザインとかではなくスポーツに関連したコレクションという意味ですね。今回HUMMEL 00には、ブランドに合わせたアウトプットをしましたが、BASICKSに関しましては、枠はなくハイパースポーツというか、再構築もそうですが、ヒップホップやパンクっぽい要素を入れてみたりミクスチャーで作ってみようというのはありました。


W:会場を秩父宮ラグビー場に決めた理由を教えていただけますか?
M:元々、BASICKSをスポーツ系の会場でやりたいなと思っていましたがHUMMEL 00の会場には悩んでいました。実は、自分の中で二つの異なるブランドのショーを一つのストーリーに繋げようと考えていました。HUMMEL 00は、心臓の音から始まり、新生HUMMELが始まるというイントロダクションのようなショーにしていて、BASICKSがサビではないですけど枠を取っ払ったものを作り、心臓の音で終わらせるという繋がったショーにしました。元々BASICKSでの候補にもあった代々木体育館をHUMMEL 00のショー会場にしたことで、同じスポーツの会場で繋げるという事で秩父宮ラグビー場になりました。






W:今回多くのコラボレーションがコレクション中に登場致しますが、それぞれ森川さんご指名されたのですか?
M:Reebokさんに関してはコラボレーションのお話しを頂きました。NEWERAはお話をもらったというよりは、うちでアップサイクルのキャップを製作していたものが人気だったのですが、そろそろオフィシャルでやりませんかとお話しを頂き、今回のドジャースのお祭り的なイベントに合わせてお取り組みをさせて頂きました。僕は、普段あまり展示会には行かないのですが、DELUXEは先輩であり飲み仲間でもあるのでお邪魔させて頂き、そこでPENDLETONのコラボレーションに良いものがあったのでコラボレーションさせて頂きました。普段メンズで展開されているDELUXEをレディースに広げてみても面白いかと思ったのも理由の一つです。



W:今回のコレクションの中で特に注目してほしいディテールなどはございますか?
M:アイロンプレスでシワ加工を作ったシワのプロダクトや前と後ろを逆にしたシャツなどプロセスやデザインを前後逆にしたアイテムは見て頂きたいですね。また、古着やアーカイブから着想を得たアイテムに異なる要素を加えたり、スポーツアイテムのサイズや素材、アイテム自体の使用用途を変えたり、フェティッシュやパンクの要素を掛け合わせるなどモードのリファレンスを組み合わせたら面白いんじゃないかと思い進めました。



W:今シーズンより HUMMEL 00のデザイナーにも就任されました。二つブランドを同時に手掛ける中で難しかった部分やプラスに働いた部分がありましたら教えて頂けますか?
M:難しい部分をそんなにありませんでしたね。サイジングや素材での差異をつけたいと思ってはいました。例えば、HUMMEL 00のトラックスーツは、ジャケットをタイトでパンツをバギーにしたのでBASICKSではそのようなデザインを作らなかったりしました。そのほかにもHUMMEL 00には、スウェット素材のテーラードを作ったのでBASICKSでは、シワ加工のジャケットを作ったりするなど異なるアプローチにしています。BASICKSは、様々な要素を入れているので一つ一つのアイテムだけを見てしまうと全体像が見えにくい部分があるかもしれませんが、HUMMEL 00にはブランドとしての枠があるので僕のやりたかった事がクリアに見える部分が良かったかと思います。
W:今後の森川様の目標やブランドの向かっていく方向性などについて教えて頂けますでしょうか?
M:BASICKSは、デザイン的にはパリを目指すということではないので、旗艦店のオープンなど、もう少し裾野を広げるようなマーケティングをできたら良いなと思います。
毎シーズンブランドが伸びている中で、どうしたらより伸ばせるのかという会社をデザインするという部分に力を入れていきたいです。HUMMEL 00に関しましては始めたばかりなので、少しずつアカウント数を増やしたり、ユーザーの手に取ってもらえるようにしたいですね。あとは、せっかくHummelという歴史あるブランドなのでコラボレーションを積極的にしていきたいと思っています。
W:BASICKSでは、パリでのショーなどは考えられていないのですね。それには何か理由があるのですか?
M:そうですね。BASICKSにはあまり合わないのかなと思います。もしパリでショーをするブランドにするなら他のラインを作った方が早いと思います。というのも僕は、BASICKSでは価格帯をすごく意識しています。ニットで¥28,000ぐらいですし。例えば楽天ファッションウィークでショーをされている他のブランドさんですと、もっとお金をかけて、良いファブリックを使っているので、商品もより高価格帯かと思います。もちろんその方がクオリティーも良いです。ただ、そこで広がっていく限界のラインを僕は経験してしまっているので。そことは違うもっと広い分野にも届くものをBASICKSではやらないといけないと思って取り組んでいます。