熊谷隆志氏が1998年に設立し、絶大な人気を誇ったGDCが今年復活する。
WTSでは、熊谷氏に再始動するGDCについてインタビューを行った。
WTS(以下:W) なぜ、GDCをこのタイミングで復活させようと思われたのでしょうか?
Mr. Kumagai(以下:K)これまで仕事をしてきたブランドを卒業するタイミングになったのと、自分のキャリアを考えた時にまた一からブランドを始めるよりもGDCを復活させる方がベターかと思い、そろそろ動こうかなと思いました。
W:スタイリストだけではなく、フォトグラファーとしてもご活躍され、さまざまな趣味をお持ちだと思うのですが。今回のコレクションのインスピレーションは、どのようなタイミングで得られていたのでしょうか?
K:NEISSANCEとかVENTURAとか、GDCとは別に大人っぽいブランドも幾つかやってきて、作る洋服のテイストや内容は年齢層によって大まかに分けていたんですが、自分のキャリアの集大成として、例えばヴィンテージアメカジのテイストや、ハリスやエミスフェールに代表されるフレンチのテイストなど、“熊谷隆志”のフィルターを通した独自の世界観として発表しようと思っているのが、今回GDCです。
W:新しいGDCと以前のGDCの違いはなんでしょうか?
K:一言でいうなら、大人っぽい感覚、になるのかもしれません。あとは、 最近20 代の古着YouTuberの動画とかも結構見るのですが、意外に面白い。蘊蓄やディテール論とは異なる感覚で洋服やヴィンテージを捉えている彼らにも見刺さるようなアイテムも提案するつもりです。20代から4、50代、新規から往年のGDCファンまで幅広く、4世代の方々に向けてコレクションを作っていきます。
W:ブランドをスタートされた時と、今の熊谷さんの中で変わらない点を教えて頂けますか?
K: 90年代後半にGDCというブランドを僕が作って、2025年になってまたディレクションするんですけど、結局は自分自身の趣味趣向の集大成だなと思っているんです。なので、正直なことを言えば当時とあまり変わった点はないですね。自分のやりたいことをやるブランドではあるのですが、ストリートのテイストやヴィンテージのアメカジ、フレンチトラッドなど、自分が通過して影響を受けてきたカルチャーを代表するプロダクトで構成する、自分の中のセレクトショップみたいな感覚ですね。
W:多くのコラボレーションを展開されるとお伺いしたのですが、ご紹介頂ける範囲内で教えて頂けますでしょうか?
K: GDCといえば、KJくん、という方もいまだに多いと思うのですが、復活1発目となるコラボレーションは彼と作ったコレクションが登場します。自分が過去に撮影してKJくんが気に入って今でも所有しているランドスケープの写真を落とし込んだものや、ライブの1シーンを切り取って、全面プリントで表現したTシャツなど、たくさんの方に喜んでいただけるアイテムができたんじゃないかと思っています。



W:ブランドをチョイスされる時のポイントなどはありますか?
K:大事にしているのは僕が好きで日頃から身につけているブランドであること、ですかね。リアリティを追求する中で、そうしたブランドの方たちとコラボレーションさせていただきたいなと思って。実は、GDCが今年復活するんです」と伝えると皆さん意外に喜んでくださるケースが多くて(笑)、ご一緒できる機会に恵まれていると思いますね。
W:コラボレーションのデザインは、普段ご自身のコレクションをデザインされる際とどのような点が異なりますか?
K:インラインとコラボでデザインの方向が変わることはないです、物作り自体はフラットな気持ちで取り組んでいますね。その一方で、ブランドの人気のあるアイテムとかブランドサイドの要望も聞きながら、デザインを作成していく中で落とし込むようにしています。
あまりにも突飛な物を作るのは極力避けているつもりです、僕自身は好きなんですが(苦笑)。ブランドをやる以上、色々な世代の方に気に入ってもらえるのが基本だと思うので、ある程度ベストセラーに近いものをチョイスしているつもりです。
W:過去のアーカイブでお気に入りのアイテムを 3 点ほど教えて頂けますか?
K:GDCといえばナポレオンジャケット。手前味噌な表現になるのですが、今みても古臭さを感じさせないアイテムだと思います。シルエット、パターン、生地、オリジナルで作成した付属、などデザインディテールの細部まで話し始めるとキリがないレベルでこだわってます。あとは、毎回スタジャンを作っていたのですが、雪の結晶を刺繍で打ち込んだスタジャンは初期の名作。当時毎回100 枚はシーディング用にも作っていましたね。0から 100までのアイテムにはナンバリングをつけて、それらは日頃からお世話になっている方々へギフトしていました。毎回僕が0番で。誰が何番っていうのがあったので転売したらすぐにわかっちゃう(笑)。あとは、KinskiのTシャツかな。ナターシャ・キンスキーという女優さんがいて、僕がその女優さんを好きだったのでフロントにレターグラフックをプリントしたシンプルなデザインで作ったんですが、信じられないレベルで売れちゃって。ブランドをスタートした当初からTシャツ類は相当な枚数を売りましたが、これもその一つです。



W:2028 年にはブランド創設 30 周年を迎えられますが、今後GDCをどのようにしていきたいですか?
K: 3月8日に代官山に直営店をオープンさせて、26年SSシーズンからは海外含め過去にお世話になった地方店の方々とも取り組みを再開できたら良いな、と思っています。海外、特にアジア諸国でもGDCは当時人気があったのでアジア展開は拡大したいですし、30周年は大きなイベントをアジアのどこかの国でやりたいですね。

Text:SHUHEI
Photo:Tomoyuki Nagashima