皆様はこのスニーカーをご存知でしょうか?
スニーカーフリークなら一度は憧れるoff-white コラボのAJ1。
中でもホワイトカラーのモデルはEU exclusiveとなり非常に入手困難を極めた1足でもあります。
一見してそのEUモデルと差異のないようにみえるこちらのモデル。
しかしその裏側には壮大なストーリーが存在しました。
時は遡り2016年10月
NIKEを訪れたVirgilは新たなコラボレーションシリーズの発案にとりかかりました。
THE TEN コレクションと名付けたプロジェクトはリビーリングとゴースティングの2つのテーマに分かれ既存のベースを元に再構築をはかりシルエットを完成させ、このシリーズは後に伝説的コレクションとなりました。
中でもVirgilが最も力を注いだと言われているモデルがAir force1とNIKEブランドの代名詞とも言えるAir jordan1です。
そしてプロジェクトがスタートしてから1ヶ月後の2016年11月
彼はTHE TENコレクションのAJ1ファーストモックアップを誕生させました。
それは我々が知るシカゴカラーのAJ1ではなく、off-whiteを象徴するオールホワイトのアッパーにグレーのウイングロゴを持つAJ1でした。
その後ファーストモックアップを完成させたVirgilは同月16日、自身のアイデアノートに
“All white might leave a few of them out of the story”
と記し
真っ白のキャンバスをベースに新たに色付けを行う事を示唆するかのように、オールホワイトのAJ1をTHETENコレクションのリリース予定モデルから除外する事を決定しました。
オールホワイトで構成されたアッパーはシカゴ配色へと変更されグレーウイングはブラックウイングへ…..
シュータンの赤いNIKEタグを除き大きな改変を加えられたスニーカー史に残る最高傑作が誕生しました。
その翌年の2017 9/6~9/8にかけてNY 23 Wall Streetにてレセプションパーティーでのコレクション披露を経て、同月27日
シカゴカラーのpromotion sampleをプロジェクトに貢献したNIKEfamilyとVirgilが選んだ限られた仲間内にのみ通常とは異なる BOMラベルのついたjordan1boxに入れられてギフトされました。
さらにそのpromotion sampleの上位互換となったのがシリーズから除外されたオールホワイトの本作です。
同時期に製造された本作は後に販売された2018年製とはディテール、形状が全て異なり、
シカゴのディテールをベースとした鋭角なスウッシュを持ち、シュータンはシカゴと同仕様の赤ラベル
ウイングロゴにはプロトタイプ同様のグレーカラーを採用、
ライニングの素材やサイドパネル、トゥボックスも通常とは異なるブルーの異素材を仕様したスペシャル仕様のF&Fモデルです。
またグレーのウイングロゴは、”黒と白の間の灰色の領域”である”オフホワイトの色”を表しており、それは完全なるシカゴのオフホワイトver.と言える仕上がりとなりました。
その後の正式リリースも大成功
をおさめた翌年の2018年
Virgilは黒人としては初めてのルイ・ヴィトン メンズウェア部門のクリエイティブディレクターに指名され、ファッション業界に新しい風を吹き込みました。
その大功績を記念してオールホワイトの特別なAJ1は、TENコレクションを外れ新たな姿に生まれ変わり、ヴィトン誕生の地、ファッションの聖地でもあるヨーロッパにて限定リリースされる運びとなりました。
このように彼自身にとってオールホワイトのシューズはoff-whiteを象徴するブランドの代名詞とも言えます。
F&FモデルにあたるAJ1もAF1もAJ5も全てホワイト1色であったように彼自身にとって最も思い入れが強く、全ての始まりの色であったのだと思います。
伝説的1足でありながらその姿をメディアに現した事はほとんどなく、このモデルをご存知でない方も非常に多いかと存じます。
スニーカーの歴史の中で高く評価される名作の在り方は、価格的な価値や希少性だけではなく、物語とその結びつき方を通して背景を評価される必要があり、正しい評価は歴史を素晴らしい物へと変え後世に残っていきます。
chicagoカラーも素晴らしい名作ではありますが、そもそもリリース予定が無かったはずのwhiteカラーがリリースに至った背景もまた後世に残すべき大切なストーリーであると私は思います。
☆生産足数
12足〜18足
PHOTO TEXT by IG @keroro.shinken112


