WTS 1987 | ストリートとラグジュアリーを繋ぐ者 Kim Jones - wts
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ストリートとラグジュアリーを繋ぐ者 Kim Jones

かつて交わることのなかったラグジュアリーブランドとストリートブランド。その二つを繋げた人物が現在DIORとFENDIのクリエイティブディレクターを手がけるKIM JONESだ。

彼が手がける手法は、自分自身の生い立ち、自身が経験したカルチャーを反映させるものだ。

母国を代表するブランドUmbroやdunhillを経て、Louis Vuittonのデザイナーへと就任したジョーンズ は、
ストリートカルチャーが生み出したコラボレーションという手法をラグジュアリーブランドへと落とし込み、新たなLouis Vuitton像を作り出した。 
元々ストリートシーンで生み出されたコラボレーション(ダブルネーム)という手法を大胆にもメゾンの最高峰で次々と行っていくのは、ストリートシーンを経験し、その強みを理解しているKimらしいと言えるだろう。

Kimの手がけたLouis Vuittonのファーストコレクションは、自身が幼少期に過ごしたアフリカをインスピレーション源にマサイ族が作り上げたマサイチェックをダミエ柄とミックスする形でコレクションに融合した。
その後は、イギリスから日本へと移り住み、テーラードの聖地であるサヴィルロウとパンク、ストリートの要素をミックスさせたスタイルを作り上げたクリストファー・ネメスへの敬意を払い、彼が作り上げたロープグラフィックをコレクションに大胆に落とし込んだコレクションを発表。両コレクションとも彼の生い立ちを反映させたものだった。

さらには、彼が大きく影響を受けた裏原宿カルチャーのゴッドファーザー藤原ヒロシ氏の手がけるfragment designとのコラボレーションを展開、そして今も語り継がれ、ラグジュアリーとストリートを結ぶきっかけとなったSupremeとの歴史的コラボレーションを行う。両ブランドのロゴを大胆に使用したコラボレーションは、ファッションシーンのトレンドを変革した。


その後、DIORのデザイナーへと就任した彼のクリエーションはさらに独自の道を切り開いていくことになる。AMBUSHを手掛けるYOONや1017ALYX 9SMを手掛けるMatthewをチームへと加えて制作されたDIORでのファーストコレクションは、現代アーティストKAWSとのコラボレーションを発表。

DIORを象徴するテーラードにアーティストが手がけたポップなロゴやグラフィックが落とし込まれたコレクションは、新たな可能性を感じさせた。

DIOR移籍後のKimは、アートとファッションのつながりをストリート的なアプローチで繋げるクリエーシ
ョンを行っていく。空山基氏やDaniel Arshamのアートワークや手法をコレクション全体に落とし込んだ。

そして、再びストリートとラグジュアリーがKimの手により交わった。

DIORは、STUSSYの創設者であるShawn Stussy、スニーカーカルチャーの原点Air Jordanとの歴史的なコラボレーションを行う。コレクションでは、Shawnが作り上げた独自のフォントやグラフィックをコレクション全体に落とし込む。このStussyとのコラボレーションの背景には、若かりし頃のKimが背景にあり、イギリスで初期のSTUSSYのディストリビューションを手掛けていたGimme Fiveで働いていたジョーンズは、STUSSYのコミュニティの一員でもありストリートとラグジュアリーの融合という意味では完成形を思わせるほどのコレクションを作りあげた。


最近では、Supremeのクリエイティブディレクター、そしてDenim Tearsの創設者であるTramaineとのコラボレーションを公開。常に最新のカルチャーもチェックしているKimらしい着眼点と言えるだろう。

彼がLouis VuittonやDIORで行ってきたクリエーションは、カルチャーに精通し、自身が実際に体験してきたからこそ生み出される本物の輝き、そして強い説得力がある。

コラボレーションする相手の特徴や歴史を理解した上で作り上げられるプロダクトは、どれも後世に語り継がれる逸品だ。 メゾンのトップを走り続けながらも、ストリート的な手法を駆使する現代的なデザイナーKim Jones、今後も彼のクリエーションから目が離せない。

Photo by DIOR

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